17.5. ヒトの進化史
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霊長類の進化
化石の記録から霊長類は6500万年前の白亜紀後期に昆虫食の哺乳類から進化したという仮説が支持されている これら初期の霊長類は、小型で樹上性の哺乳類であった 枝から枝へぶら下がりながら移動できるしなやかな肩関節
機敏に動く手によって、枝にぶら下がったり、餌を掴むことができる
多くの霊長類ではつめがかぎ状ではなく平らであり、指はきわめて敏感
両目は顔の前面に近接して並び、両眼の視野が重複することによって遠近感覚が強化されている(両眼視差)が、これは樹上で移動するのに明らかに有利 眼と手のすぐれた強調も樹上生活には重要
樹上では子育てには親の世話が欠かせない
哺乳類は他の脊椎動物よりも多くのエネルギーを子育てに費やすが、哺乳類の中でも霊長類は子にとって最も行き届いた親 大部分の霊長類は1個体の子を産み、長期間かけて育てる
ヒトは樹上には生息していないが、樹上で生じたこれらの形質を、改変はあっても持ち続けている
分類学者は、霊長類を3つの主要なグループに分ける
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マダガスカル、アフリカおよびアジア
小型の夜行性樹上生活者で東南アジアにだけ生息する
新世界ザルはすべて樹上性で、物につかまることのでいる尾をもつという特徴がある この尾は移動のときに余分な脚としての働きをする
旧世界ザルにも樹上性のものはいるが、彼らの尾は物につかまることはできない 親指で同じ手の他の4本の指の先に触れることができる
彼らは旧世界の熱帯地域にだけ生息する
テナガザル類を除けば、類人猿類はサル類より大型で、比較的長い腕と短い脚を持ち、尾はない
すべての類人猿は樹上でも生活できるが、基本的に樹上性なのはテナガザル類とオランウータン類だけ
類人猿類は体の大きさに比して他のサル類より大きな脳をもち、彼らの行動はより融通性に富む も類人猿に含まれる
人類の出現
人類は生命の系統樹にあってはきわめて若い1本の小枝
化石の記録と分子系統学によれば、35億年の生命の流れの中で、ヒトとチンパンジーが共通のアフリカの祖先から分かれたのは500万~700万年前 1年に圧縮すれば、人類の枝は18時間しか存在していないことになる
よくあるいくつかの誤解
我々の祖先がチンパンジーあるいは他の現存の類人猿であるという誤解
チンパンジーとヒトとは、真猿類の系統樹の中で共通のより原始的な祖先から分かれた2本の枝
もう1つの誤解は、ヒトの進化を、祖先の真猿類からホモ・サピエンスまでの段階的に続くはしごのように想像すること
もしヒトの進化が行進であるならば、それは途中で多くのグループが道筋から外れて袋小路へと迷い込んでいくような、とても無秩序な行列
ヒト科の歴史においては、ときにいくつかの種が共存していた https://gyazo.com/d5e905ef84e74f420bbce3c52e940db9
ヒトの系統はひとつづきのはしごというよりはたくさんの枝を持つ潅木
我々の種は未だに生き残っているただ1本の小枝の先に位置する
さらなる誤解は、直立姿勢や大きな脳など、さまざまなヒトの特徴が同調して進化したという考え
我々の家系図の中には直立で歩行しても、類人猿並みの脳しか持たない祖先も含まれる
アウストラロピテクスと二足歩行の古さ
約320万年前のアウストラロピテクス・アファレンシスの最も完全な骨格化石
身長はわずか約3フィート(約91cm)、頭部はソフトボール大
ルーシーとその仲間はサバンナ地帯で暮らし、木の実や趣旨、鳥の卵、その他捕まえることのできた動物、あるいはもっと効率的な捕食者であるイヌ科やネコ科の動物が殺した残り物を食べていたと思われる ホモ・ハビリスと創意に富む心
脳の拡大が最初に見られるのは約240万年前の東アフリカの化石
ヒトの基本的な特徴である大きな脳は、もう1つの重要な特徴である二足歩行よりも数百万年遅れて進化したことになる 直立歩行の200万年後に、人類は手先の器用さと大きな脳を使って、アフリカのサバンナで狩猟、収集、腐食などに役立つ道具を発明し始めた
ホモ・エレクトゥスと人類の世界的放散
アフリカから他の大陸へと生息範囲を広げた最初の種
彼らはホモ・ハビリスの子孫かもしれない
180万年前のホモ・エレクトゥスの頭蓋骨が旧ソビエトのグルジア共和国で発見されたが、これがアフリカ以外で知られる最古のヒト科の化石
ホモ・エレクトゥスはヨーロッパやアジアの多くの地域に移動して植民し、最終的には遠くインドネシにまで達した
ホモ・エレクトゥスはホモ・ハビリスよりも背が高く、脳容積も大きかった
この種が存続した150万年の間に脳は現代人に匹敵する1200cm³まで増加した
知能は人類がアフリカで成功するのに役立ったと同時に、北方の寒い気候の中で生き延びるのにも役立った
ホモ・エレクトゥスは小屋や洞窟に住み、火をおこし、動物の毛皮で衣服を作り、石器を設計した
肉体的、生理的には、ホモ・エレクトゥスは熱帯以外にはあまり適応していなかったが、賢さと社会協力によって不足を補っていた
アフリカ、アジア、ヨーロッパ、およびオーストラリア周辺のホモ・エレクトゥス個体群の中には、地域的な多様化によってもっと大きな脳を持つ子孫が出現した
ヨーロッパ、中東およびアジアに20万年前から3万年前まで生息した
ホモ・エレクトゥスの子孫である
我々に比べて、額の突出がやや強く、顎はあまり目立たないが、脳はほぼ同等であった
彼らは優秀な道具製作者であったし、抽象的思考がなければできない埋葬やその他の儀式も行って言うr 科学者はネアンデルタール人の体形については語ることができる
ホモ・サピエンスの起源と核酸
化石は16万年から19万5000年前のもので、エチオピアで発見されている
このことは、彼らが単独な系統であることを示唆している
エチオピアの化石から、ヒトの起源についての分子的証拠が得られている
それによると、DNAの研究に拠って、現存のすべてのヒトの祖先をたどると、16万年から20万年前のアフリカのただ1人の女性に行き着くということが示唆されている(ミトコンドリア・イヴ) 化石の証拠から、ヒトはアフリカから1回またはそれ以上波状に広がり、まずアジアへ、次いでヨーロッパとオーストラリアに広がった
アフリカ以外での最古のヒトの化石は5万年前のもの
新世界へのヒトの到達がいつであったかははっきりとはしないが、ほぼ認められている証拠からは、少なくとも1万5000年前と推測されている
文化的進化
ヒト独特のいくつかの特性が、ヒト社会の発展を可能にした
霊長類の脳は生まれた後も成長が継続するが、ヒトの場合は成長期間が他の霊長類より長い
成長期間の延長は、子に対する親の世話の期間も長くさせ、それによって子が前の世代の経験を自分の利益に役立てることが可能になる
蓄積された知識、習慣、信仰、芸術などが世代を越えて社会的に伝達されるという現象
第1段階は200万年前、アフリカの草原で狩猟採集生活をしていた遊動民で始まった 3万年前の洞窟壁画は、初期の文化的ルーツの1例である 第2段階は1万~1万5000年前のアフリカ、ユーラシア、南北アメリカでの農業の発展
農業によって定住生活と集落の形成が始まった
それ以後、新技術の発展は指数関数的に飛躍した
インターネットが商業、コミュニケーションおよび教育を変容させるのに10年とかかっていない
単純な狩猟採集民からハイテク社会までの文化的進化の過程で、我々は生物学的には何も変わっていない
たぶん、我々は洞窟に住んでいた祖先と比べても知能的に優れてはいない
何百世代ものヒトの経験の産物
地球上の生命にホモ・サピエンスという単一の種ほど大きな影響を与えたものはない
ヒトの進化が世界にもたらした結果は恐るべきものである
自然選択によって環境に適応するまで待つ必要はなく、必要に応じて環境を変えてしまう
大型動物の中で最も多数で最も広範囲に存在するのは我々であり、行く先々で多くの種が適応する要理も速い環境の変化をもたらす
1900年代の絶滅率は過去10万年の平均の50倍も大きい